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公衆衛生と都市計画を学ぶためUCLAに留学中の和製家庭医のブログです

公衆衛生における倫理 & 健康格差(Week 3)

【COM-HLT210】
Research Ethics and Public Health
Ethicsとは:その人の態度や行動を支配する道徳的なルール
Research ethicsとは:研究をどのように行い、公開するかについての倫理的なガイドライン
 
(倫理的スタンスの大きな4分類)
 
普遍主義
偶発的/相対主義
義務論/非結果主義
倫理的原則は決して破ってはならない。これらの原則を破ることは、道徳的に間違っていると同時に、社会調査にとって有害である。
義務は、特定の国、地域社会、専門家グループ、顧客と結びついている。
 
結果主義
手段は目的と重ならないが、普遍的な規則や慣習に従うことは、しばしば目的を追求するために信頼できる。(功利主義
行為は、純粋にその可能な結果によって判断されるべきである。
 
 
  • Nuremberg Code: ナチスの教訓をもとに作られた
被検者の自発的な同意が必須
 
  • Belmont Report: Tuskegee Syphilis Studyの教訓をもとに作られた
尊厳の尊重(同意、vulnerable populationsへの配慮の重要性)
リスクベネフィットの重視(有害性が分かってるなら止める)
正義の尊重(vulnerable populationの搾取をしないetc)
 
<Best Slide>

 
<Best Reading>
Schüklenk U. (2005). Module one: introduction to research ethics. Developing world bioethics, 5(1), 1–13. https://doi.org/10.1111/j.1471-8847.2005.00099.x
 
<コメント>
昔を振り返るとありえないと思うような事がされているが、その当時は特に違和感が無かったから行われていたんじゃないだろうか。だから彼らが異常で、自分たちが正常と思うのではなく、今も気付かれていないだけで、倫理的に問題のある事はなされている可能性がある。公衆衛生における倫理は、生命倫理の考え方が大前提にあるが、大きく違うのは対象が個人か集団か、という点。個人の自主的な同意を取ったり、個人のメリット・デメリットと天秤にかける、という考え方をそのまま集団には適用できない。コミュニティーとしての同意や利害をどうやって判断するのか、というのはとても難しい。また、倫理基準は法的な拘束力はないため、どこまでを倫理的問題とするのか、どこからを法的問題とするのか、の千疋も難しい。
 

【PUB-HLT200】
(Epidemiology)練習問題をやりながら、Risk Difference, Risk Ratio, Attributable Risk Fractionの理解を深める。
Attributable Risk Fractionの分母をexposed group(exposed AR)にするか、total population(population AR)にするか、というのが未だにはっきりしないところ。
 
(Community Health Science)Health Disparities and Health Inequities
Behavior, Knowledge, Belief, Attitudeの違い
TheoryとModelの違い:theoryはより洗練されていて、modelはより広く必ずしも詳細なものとは限らない
今回紹介したのは
Health Belief Model
Social Cognitive Theory
Socio Ecologic Model
Stages of Change
Theory of Planned Behavior
 
(Biostatistics)確率変数(random variables)
確率変数には2種類:離散型と連続型
離散型の確率変数はPMF(確率質量関数)と呼ばれる
連続型の確率変数はPDF(確率密度関数)と呼ばれる
CDF(累積分布関数)は、PMFやPDFの面積(積分)のこと
 
PMFの期待値E(X)はμ、分散Var(X)はσ2と表される。σ2=E(X2)-μ2。
 
特殊だけど頻用されるPMF(離散型)として二項分布(binominal distribution)というのがある。各事象が「独立」である事、各事象は「成功」or「失敗」の2択であること、が特徴。
二項分布の期待値E(X)はnp、分散Var(X)はnp(1-p)で表される。
 
ある事象が起こる事が、異常かどうかをどのように判定すべきかについて、確率P(X=k)ではなくP(X≧k)orP(X≦k)を用いる理由
→例えば、一般的に自閉症の発生率が5%だった時に、ある100人の集団の中で、自閉症が10人出た場合、それが異常かどうかを判定する時、P(X=10)ではなく、P(X≧10)を用いる。これは、ピンポイントでP(X=10)となる確率はあまり意味がなく、実際にほしいのはP(X≧10)だから、である。
nが100ならまだしも、nが10,0000とかになった場合、P(X=10)に限らず特定のXの値となる確率はnが大きいせいで、小さくなってしまい、あまり実際的な意味が無くなってしまう。さらに離散型ならまだしも連続型の場合、特定の値を取る確率P(X=k)というのは存在し得ない。従って、積を求めるP(X≧k)の方が実情を反映する数値となる
 
(Environmental Health Science)
Distributional Justice vs Procedural Justice
困窮している集団に対して危険が不当に分配されていないか
vs
困窮している集団の事を一番に考えて意思決定がなされているかどうか
 
分布を見る時は、地図上の直線距離で近接性を評価するのではなく、実際に車や交通機関を使った場合の距離で近接性を評価しないといけない
 
食品へのアクセスと社会的不平等の関係について
Upstream vs Downstream
upstreamの介入の方が有効かつ経費が少なくて済む。しかし、現実にはupstreamの介入はあまり行われない。理由は、企業の反対や、政府の過干渉、個人の自由の侵害、法的な制約など。
 
High Agency vs Low Agency
High Agencyの介入は、労力を要する一方で効果が低く、さらには格差を広げやすい
 
<Best Slide>

 
 
<Best Reading>
 
<コメント>
EpidemiologyやBiostatisticsは、分からない内容が出てくるのではないかと毎週のように戦々恐々としているが、今のところなんとか生き延びている。大学時代にきちんとやってこなかったツケを払わされている感じ。
今週一番興味深かったのは、EHSの授業。Environmental JusticeにはDistributional JusticeとProcedural Justiceがある事、介入はUpstreamの方がコストもかからず効果も大きいが現実にはあまりなされない事、High Agencyの介入は、コストがかかるだけでなく格差を広げる可能性が高い、という事。