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公衆衛生と都市計画を学ぶためUCLAに留学中の和製家庭医のブログです

米国の学生を取り巻く環境 & 医療の質 & 縦断研究と研究倫理(week 8)

【COM-HLT210】

<授業ノート>

●現在キャンパスで行われている学生労働者の労働組合によるストライキについて

他の生活費も上昇しているが、学費はそれを上回るペースで上昇している。

つまり、相対的に大学教育はどんどん一般市民の手が届かないものになっている。

こうした上昇は私立大学よりも公立大学の方が顕著。

もともと高かった私立大学はそんなに変わらず高いまま、という事だが、公立大学と私立大学の差がどんどん無くなっている。

アメリカの高等教育機関においてここまで大規模なデモは初めてとのこと。

そもそもUC群はアメリカで最大の大学組織だが、そのUnionも最大なわけで、必然的に歴史上最大のアカデミアによるデモ、という事になるらしい。(Ivy Leagueなどではそもそも学生のUnionが無いとのこと)

UCLAは多額の献金を集めており、物理的には学生労働者の給与を上げる事は不可能ではないはずなのにそれをしないのだという。つまりpublic universityだが、非常にcapitalistな組織なのだ。これが全米No.1の公立大学の実情。

 

<Best Slide>

 





 

 

 



 

 

【PUB-HLT200】

<授業ノート>

<Health Policy Management>

●よい「質の評価指標」とは?評価指標自体はどのように評価すればよいか?

→4つの軸:Importance、Scientific Support、Usability、Feasibility

 

●医療の質に関する指標

①3つの軸(Donabedian Framework)

Structure、Process、Outcome

「質」をどのように評価するかは、立場によって異なる(保険会社、病院、患者etc)

  • Structureの質とは、地域社会においてサービスへのアクセスや提供に影響する要素。地域社会、医療機関、医療提供者、対象集団の特性を評価する。
  • Processの質とは、患者と医療提供者の間の相互作用で生じるもの。4つの軸(技術、対人関係、分配、生産性)を評価する。
  • Outcomeの質は3つの軸(臨床状態、機能的状態、患者満足度)で評価する。それらを評価するためのアプローチとしてはさらに3つの軸(疾患特異的な指標、全般的な指標、Sentinel Eventアプローチ)がある。

 

②6つの軸(IOM)

Safe、Effective、Patient-centered、Timely、Efficient、Equitable

 

●医療の質に関する情報の課題

  • populationによって信用するかどうかは異なる:若い人の方が情報を信用する傾向がある。政治的指向や、就労状況、収入、居住地域も関連がある。つまり個人的・文脈的な特性が情報源を信用するかに大きく関わっている。
  • 理想的な経済システムでは、消費者はすべての必要な情報を得て判断を下すが、医療においては情報の不均衡がある
  • 誤情報(misinformation)や偽情報(disinformation)が流布される事がある

 

●ネットで書かれたネガティブなコメントに対してどのように対応すべきか?

  • 否定的な経験について謝罪する
  • 優れたサービスを行っており、そのような出来事は日常的ではない事を強調する
  • 会話をオフラインに持ち込む
  • 患者のプライバシーを侵害したり、個人情報を共有したりしないようにする

 

<Epidemiology>

●横断研究 vs ケースコントロール研究 vs 縦断研究

横断研究:暴露と疾病を同時に測定する

ケースコントロール研究(後向き研究):疾病から後向きにさかのぼって暴露を測定する

縦断研究:疾病が発生する前に曝露を測定する(後向きコホートであっても)

※後向きコホート研究とケースコントロール研究(後向き研究)の違い

後向きコホート研究は、名前は「後向き」だが、あくまで観察の起点は過去で、そこから前向きに研究するもの。だから「過去起点コホート研究」と呼んだ方が誤解が無い。

具体的には、カルテなど、すでに取られている過去のデータを使って、そこから前向きに調査をする。課題としては、すでにある過去のデータを使うので、交絡因子に関わると思われる重要な因子が取られていなかったらそれを入れられないし、フォローアップが落ちてしまった人を拾い上げる措置も取ることができない(過去のデータなので、今からではどうしようもない)

一方、ケースコントロール研究は、すでに今の時点で発症が分かっている群とそうでない群を、過去に向かって遡る方法。結果から原因に向かって調べようとするので、こちらの方が、その名の通り「後向き」研究。

 

●Inactive control(プラセボとの比較)vs Active Control(標準治療との比較)

  • プラセボ(すでに有効な治療が分かっていても、比較群としてプラセボ(偽薬)を使う):理由:無効な治療かどうかを判断するには必要、少ないサンプルでもできるので多くの被検者を不確実な暴露にさらさずに済むし研究費も少なくてすむ、功利主義的に少数の犠牲は多数の利益のためにはやむを得ない、という考え。
  • Active Control:すでに有効な治療が分かっているならプラセボ(偽薬)ではなく、すでに有効な治療法との間で比較する:理由:すでに有効な治療法が分かっているのにそれを行わないのは被検者を不必要なリスクにさらしている、PCTは等質性の原理に反している、active controlは標準治療との比較を可能にする、患者保護を社会の利益よりも優先させるという擁護原則が重要である、という考え。ただ、既存の治療との有意差を出さないといけないので、それだけ多くのサンプルが必要となり、それだけ時間がかかるというデメリットも。

 

●Belmont Report(人を対象とした研究に関する倫理規定)

3つの要素

①Respect for Persons:Autonomyを尊重。そのための手段としてInformed Consentの必要性を強調。

②Beneficence:RiskとBenefitのバランスについての評価が重要。医師は自らの最良の判断によって患者を助けたり利益を与えないといけない

③Justice:誰が研究の恩恵を受けるべきなのか? 誰がその負担を負うべきなのか?リスクはどのようにすれば公平に配分されるのか?

※まず大前提として、人を対象とする研究をする場合には、他の方法はないのか、それだけ重要な研究なのか、を問う必要がある

 

<Environmental Health Sciences>

バングラデシュヒ素に汚染された井戸水への取り組みから学ぶ

背景:1980年代、水系感染症対策として行われた浅い井戸の普及によって、新生児死亡などは著明に減少したが、1993年にヒ素汚染が見つかった

汚染された井戸には赤い印を付ける、というアプローチはコストがかからないが、汚染されていない井戸が遠ければ結局人々はその井戸を使い続けるし、継続的に水質検査を行わないと、最初の調査で汚染されていなかった井戸もその後も汚染されていない保証はない。

従って、汚染の緩和策だけでなく、コミュニティーとの協力、啓蒙活動、地域の検査体制の整備、を包括的かつ継続的に行わなければ効果的な成果は上げられない。

 

 

<Best Slide>

アメリカで感染症による死亡が減った理由は大きくは下記の3つ

- 清潔な飲料水と下水道の提供 

- 抗生物質

- ワクチン