みんなが健康に過ごせる世界を作るために自分ができること

公衆衛生と都市計画を学ぶためUCLAに留学中の和製家庭医のブログです

米国の学生を取り巻く環境 & 医療の質 & 縦断研究と研究倫理(week 8)

【COM-HLT210】

<授業ノート>

●現在キャンパスで行われている学生労働者の労働組合によるストライキについて

他の生活費も上昇しているが、学費はそれを上回るペースで上昇している。

つまり、相対的に大学教育はどんどん一般市民の手が届かないものになっている。

こうした上昇は私立大学よりも公立大学の方が顕著。

もともと高かった私立大学はそんなに変わらず高いまま、という事だが、公立大学と私立大学の差がどんどん無くなっている。

アメリカの高等教育機関においてここまで大規模なデモは初めてとのこと。

そもそもUC群はアメリカで最大の大学組織だが、そのUnionも最大なわけで、必然的に歴史上最大のアカデミアによるデモ、という事になるらしい。(Ivy Leagueなどではそもそも学生のUnionが無いとのこと)

UCLAは多額の献金を集めており、物理的には学生労働者の給与を上げる事は不可能ではないはずなのにそれをしないのだという。つまりpublic universityだが、非常にcapitalistな組織なのだ。これが全米No.1の公立大学の実情。

 

<Best Slide>

 





 

 

 



 

 

【PUB-HLT200】

<授業ノート>

<Health Policy Management>

●よい「質の評価指標」とは?評価指標自体はどのように評価すればよいか?

→4つの軸:Importance、Scientific Support、Usability、Feasibility

 

●医療の質に関する指標

①3つの軸(Donabedian Framework)

Structure、Process、Outcome

「質」をどのように評価するかは、立場によって異なる(保険会社、病院、患者etc)

  • Structureの質とは、地域社会においてサービスへのアクセスや提供に影響する要素。地域社会、医療機関、医療提供者、対象集団の特性を評価する。
  • Processの質とは、患者と医療提供者の間の相互作用で生じるもの。4つの軸(技術、対人関係、分配、生産性)を評価する。
  • Outcomeの質は3つの軸(臨床状態、機能的状態、患者満足度)で評価する。それらを評価するためのアプローチとしてはさらに3つの軸(疾患特異的な指標、全般的な指標、Sentinel Eventアプローチ)がある。

 

②6つの軸(IOM)

Safe、Effective、Patient-centered、Timely、Efficient、Equitable

 

●医療の質に関する情報の課題

  • populationによって信用するかどうかは異なる:若い人の方が情報を信用する傾向がある。政治的指向や、就労状況、収入、居住地域も関連がある。つまり個人的・文脈的な特性が情報源を信用するかに大きく関わっている。
  • 理想的な経済システムでは、消費者はすべての必要な情報を得て判断を下すが、医療においては情報の不均衡がある
  • 誤情報(misinformation)や偽情報(disinformation)が流布される事がある

 

●ネットで書かれたネガティブなコメントに対してどのように対応すべきか?

  • 否定的な経験について謝罪する
  • 優れたサービスを行っており、そのような出来事は日常的ではない事を強調する
  • 会話をオフラインに持ち込む
  • 患者のプライバシーを侵害したり、個人情報を共有したりしないようにする

 

<Epidemiology>

●横断研究 vs ケースコントロール研究 vs 縦断研究

横断研究:暴露と疾病を同時に測定する

ケースコントロール研究(後向き研究):疾病から後向きにさかのぼって暴露を測定する

縦断研究:疾病が発生する前に曝露を測定する(後向きコホートであっても)

※後向きコホート研究とケースコントロール研究(後向き研究)の違い

後向きコホート研究は、名前は「後向き」だが、あくまで観察の起点は過去で、そこから前向きに研究するもの。だから「過去起点コホート研究」と呼んだ方が誤解が無い。

具体的には、カルテなど、すでに取られている過去のデータを使って、そこから前向きに調査をする。課題としては、すでにある過去のデータを使うので、交絡因子に関わると思われる重要な因子が取られていなかったらそれを入れられないし、フォローアップが落ちてしまった人を拾い上げる措置も取ることができない(過去のデータなので、今からではどうしようもない)

一方、ケースコントロール研究は、すでに今の時点で発症が分かっている群とそうでない群を、過去に向かって遡る方法。結果から原因に向かって調べようとするので、こちらの方が、その名の通り「後向き」研究。

 

●Inactive control(プラセボとの比較)vs Active Control(標準治療との比較)

  • プラセボ(すでに有効な治療が分かっていても、比較群としてプラセボ(偽薬)を使う):理由:無効な治療かどうかを判断するには必要、少ないサンプルでもできるので多くの被検者を不確実な暴露にさらさずに済むし研究費も少なくてすむ、功利主義的に少数の犠牲は多数の利益のためにはやむを得ない、という考え。
  • Active Control:すでに有効な治療が分かっているならプラセボ(偽薬)ではなく、すでに有効な治療法との間で比較する:理由:すでに有効な治療法が分かっているのにそれを行わないのは被検者を不必要なリスクにさらしている、PCTは等質性の原理に反している、active controlは標準治療との比較を可能にする、患者保護を社会の利益よりも優先させるという擁護原則が重要である、という考え。ただ、既存の治療との有意差を出さないといけないので、それだけ多くのサンプルが必要となり、それだけ時間がかかるというデメリットも。

 

●Belmont Report(人を対象とした研究に関する倫理規定)

3つの要素

①Respect for Persons:Autonomyを尊重。そのための手段としてInformed Consentの必要性を強調。

②Beneficence:RiskとBenefitのバランスについての評価が重要。医師は自らの最良の判断によって患者を助けたり利益を与えないといけない

③Justice:誰が研究の恩恵を受けるべきなのか? 誰がその負担を負うべきなのか?リスクはどのようにすれば公平に配分されるのか?

※まず大前提として、人を対象とする研究をする場合には、他の方法はないのか、それだけ重要な研究なのか、を問う必要がある

 

<Environmental Health Sciences>

バングラデシュヒ素に汚染された井戸水への取り組みから学ぶ

背景:1980年代、水系感染症対策として行われた浅い井戸の普及によって、新生児死亡などは著明に減少したが、1993年にヒ素汚染が見つかった

汚染された井戸には赤い印を付ける、というアプローチはコストがかからないが、汚染されていない井戸が遠ければ結局人々はその井戸を使い続けるし、継続的に水質検査を行わないと、最初の調査で汚染されていなかった井戸もその後も汚染されていない保証はない。

従って、汚染の緩和策だけでなく、コミュニティーとの協力、啓蒙活動、地域の検査体制の整備、を包括的かつ継続的に行わなければ効果的な成果は上げられない。

 

 

<Best Slide>

アメリカで感染症による死亡が減った理由は大きくは下記の3つ

- 清潔な飲料水と下水道の提供 

- 抗生物質

- ワクチン

 

 

行動変容の理論とモデル & ヒ素中毒 & CBPR(week 7)

【COM-HLT210】

<授業ノート>

Theories and Models of Health Behavior

 

※ModelとTheoryの違いは?

- Theory:事象や状況を説明し予測するために、変数間の関係の体系的な見方を示す、相互に関連する一連の概念

- Model:複数のtheoryから取り入れたアイデアと概念の組み合わせであり、特定の環境における特定の問題に適用される

 

<行動変容の理論>

大きく個人レベル(intrapersonal)、個人間レベル(interpersonal)、コミュニティーレベルの3つに分かれる

 

<個人レベル>

①Health Belief Model 認知が人の行動を決める上で重要という考え方

「罹患性susceptibility/重大性severity/有益性benefit/障害性barrier」の4つの認知

2つのS(Severity/Susceptibility)がPerceived threat(どの程度の脅威かに影響する)

2つのB(Barrier/Benefit)がDetermines response(行動に影響する)

最終的な行動には、Cues to action(行動のきっかけ)とSelf-Efficacy(自己効力感)が影響するが、これらは人によって異なる

また、いずれの要素も、修飾因子(年齢、性別、SES、人間関係、知識などの影響を受ける)

 

②変化のステージモデル (Trans-theoretical Model: TTM): 5つのステージ

TTMは他の行動変容のモデルと比べて、行動変容する気のの無い人も含んでいる点において、より多くの人を対象にできる、という強みがある。有効性が高い介入よりも、多くの参加者を集められる介入の方がpopulationへの介入においては最終的に大きな影響を及ぼしうる(ただ、precontemplation stageは少なくとも問題を認識していないといけない。だからトランス脂肪酸問題のようにその問題性を知らない人が多い場合には、このモデルの範囲外になる。また、IPVや人種差別はprecontemplationに持っていくこと自体が難しい。パラダイム・シフトをしないといけない。)

また、個人レベルだけでなくコミュニティーレベルでも適応できる(クラスターランダム化試験etc)

 

※Stages of Change以外の要素

  • Process of change (Potential change strategies): 10のタイプ
  • Decisional Balance:メリットとデメリットのバランスの各変化ステージにおける推移は、不健康な行動を中止する場合と、健康な行動を継続する場合では異なる(健康な行動を継続する場合にはメリットが高いまま続かないといけない)
  • Temptation scales: temptationとself-efficacyの2つの要素から成る。temptationはステージが進むにつれて低下する一方で、self-efficacyは上昇する。

 

③計画的行動理論 (Theory of Planned Behavior): 「行動意図(behavioral intention)」が行動の最も重要な決定要因だ、という考え方。この「行動意図」は、「態度(attitude toward behavior)」と「主観的規範(subjective norm)」によって決まる、というのが合理的行動理論。ここに「行動コントロール感(perceived behavioral control)」を含むのが計画的行動理論。

 

④予防行動採用プロセスモデル (Precaution Adoption Process Model: PAPM): 7つのステージ

※TTMと似ているが、TTMには無い、問題を認知する前の段階(stage1と2)が含まれている点で異なる

 

<個人間レベル>

  • 社会的認知理論(Social Cognitive Theory): 個人的要因(person)、環境要因(environment)、人間行動(behavior)が相互に影響を及ぼす(Reciprocal Determinism)という考え方

 

<コミュニティーレベル>

問題の特定や説明にフォーカスした個人レベルや個人間レベルについての理論とは毛並みが異なる

イノベーション普及理論(Diffusion of Innovation)etc

 

※マスメディアやインターネットを使った行動変容のためのコミュニケーションについて

個人レベル、社会ネットワークレベル、コミュニティーレベルなど、複数のレベルで横断的に介入する事が効果的で、個人レベルに絞った介入は失敗に終わりがち

世代によってインターネットの利用の仕方が違う(どういうサイトを使うか、どのように使うか、情報の集め方)

効果の評価方法が難しい(決まった評価方法が確立していない、そもそも効果判定が難しい(インターネットの匿名性やランダム化の難しさ))

ただ、行動変容のテクニックを利用する事は有用

 

Life Course Perspective on Health

  • period effect: ある時代に生きていたことによる影響(すべての世代が影響を受ける)
  • cohort effect: ある時代に生まれた同世代の特徴(ある世代は、同じタイミングで同じ出来事を経験している)

 

<Ecological Model (Ecological Perspective)>

健康行動には、対人関係、組織、地域、公共政策など、複数のレベルの要因が影響する

どんな疾患(問題)も1つのレベル・因子の介入だけでは解決しない一方、複数のレベルで作用する介入は、行動を変えるのに最も効果的

そしてこれは、時間軸の要素も念頭に入れておく事が重要(Lifecourse Perspective/Theoryと同様、人生のどのタイミングでどういった暴露を受けるか、という事も関わる)



 

 

<Best Slide>

上記のLife-course perspectiveとEcological perspectiveが組み合わさった図

 

<Best Reading>ともに行動変容の理論についてよくまとまっている

Public Health 101: Improving Community Health

Theory at a glance (National Cancer Institute)(日本語版あり)

 

<コメント>

 

 

 

【PUB-HLT200】バングラデシュにおけるヒ素汚染問題

バングラデシュでは、水系感染症汚染が問題となり、UNICEF主導で簡易的な井戸の整備が行われた。これによって水系感染症の数は劇的に減り、大規模な公衆衛生的な介入の効果を示した例となったが、十数年後、地下水のヒ素汚染が明らかとなった。公衆衛生的な介入が新たな公衆衛生上の問題を発生させた事例

 

<授業ノート>

<Environmental Health Sciences>

ヒ素について

ヒ素が毒性が高いのは、リンと似ているためそれに置き換わりやすい事や、酵素の働きを阻害する事が多いため

水からの暴露が一番の問題となる(土壌を経由して食物から摂取することもあるが、ヒ素は無機物の形態である方が有毒性が高く、食物に入ると有機物となるので、有毒性は下がる。また、以前使われていたCCAという防腐剤が注入された木材を燃やす事で拡散される経気道の暴露も問題となりうる。)

 

ヒ素は意外にも速やかに体内から排泄されるため(半減期10時間)、急性の暴露はあまり問題にならない(一度少量に摂取したからといって、急性・慢性いずれの問題も生じない)問題となるのは慢性暴露。

慢性暴露すると、皮膚病変や、末梢神経障害、心血管疾患、皮膚・肺・膀胱などの悪性腫瘍の原因に。胎児期に暴露した場合にも問題は発生する。

 

米国でもヒ素汚染は申告な問題

水質を規制する法律(SDWA: Safe Drinking Water Act)が存在するものの、規制違反を取り締まる内容ではないため、問題が放置されがち

水質汚染は、水道システムが整備されておらず地下水に頼らざるをえない地域で申告で、そうした地域は基本的に有色人種や貧困層が多い

従って、そうした人々がヒ素に暴露される状態が続いている

 

<Community Health Sciences>

<CBPR>

CBPR(Community Based Participatory Research)はparticipation, research, actionの3つの要素から成る

CBPRは量的か質的か、とは関係なく、方法論というよりも研究者の態度に関する枠組み

テーマはコミュニティーから発生しないといけない。外部者から持ち込まれた場合には、調整役の人を通して、本当にそのコミュニティーが求めているものなのかを吟味しないといけない

介入がコミュニティーの分断を深めるリスクにも注意が必要

誰がそのコミュニティーを代表しているのか、という点にも注意が必要(本当にそのコミュニティーリーダーが他の人達の意見を代表できているか)

人によってコミュニティーの捉え方は全然違う

外部者は、自らの潜在的な優位性(人種や資金面)について批判的でないといけない

コミュニティーが結果を公表したくない、と言った場合には、たとえ研究者としては発表しなくてもコミュニティーの意向を尊重すべき

得られた研究結果はコミュニティーの利益につなげる必要がある(研究者は、データを取ったら満足だけど、コミュニティーは健康になりたい。だからそれを実現するにはinterventionも必要)

CBPRは、学者とコミュニティーのちから関係を平等にする。それは健康格差の是正にもつながる

コミュニティーをリスペクトする上では、cultural humility of academics(研究者の文化的な謙虚さ)が重要

 

<PRECEDE-PROCEED model>

9段階で前半は課題についての診断、後半は介入評価(最後(結果)から始める(phase1とphase9は同じところ。HOWを問う前にWHYを問う))

特徴としては、「行動、環境、社会的要因のすべてが重要」と考えており、「評価」と「継続性」を重視している点

 

<Best Reading>

Minkler M. Ethical challenges for the "outside" researcher in community-based participatory research

CBPRを行う上での倫理的な注意点がよくまとまっている

人種差別 加齢とライフコース & ACA(オバマケア)(week 6)

【COM-HLT210】
Race, Ethnicity, Racism, and Discrimination
<Dr. Camera Jonesの人種差別についての4つの寓話> https://youtu.be/GNhcY6fTyBM 
①ジャパニーズ・ランタンの話:私たちが見ている色は、私たちが見る光によるもの。これらの色のついた光は、真の個別性を歪め、覆い隠してしまう。
②ドアの話:片方に対してopenなものは、他の人に対してはclosedになる。自分たちを優遇する不公平のシステムに気づくのは難しい。外部にいる人は看板の両面性を強く意識する。
③庭師の話:3つのレベルのracism(internalized, personally-mediated, institutionalized)
(institutionalized:制度化された人種差別)
社会の商品、サービス、機会へのアクセスが、"人種 "によって異なること
(personally-mediated:個人を媒介とした人種差別)
他人の能力、動機、意図について、"人種 "によって異なる仮定をすること
(internalized:内面化された人種差別)
自分たちの能力や本質的な価値について否定的なメッセージを、スティグマを持つ「人種」が受け入れること。
 
※structural racismとinstitutional racismは似ているようで違う
structural racismとは、「社会が(人種)差別を助長する方法の総体で、相互に補強し合う(不公平な)システム(住宅、教育、雇用、収入、給付、信用、メディア、医療、刑事司法など)により、今度は差別的信念、価値、資源の分配を強化する」もので、歴史、文化、相互に関連した制度に反映されている
institutional racismとは、特に人種的に不利な「国家または非国家機関の内部および間で行われる差別的な政策と慣行」のこと
 
※structural racismの2つ(3つ)の健康に及ぼす経路
居住環境の隔離(マクロからミクロに移行している)、適切な医療へのアクセス、(差別的な収監)
 
動く歩道の話:放っておいたら何もしなくてもそのままracismの方に流されていってしまう。ほとんどのracismは無意識に行われる。だから、それに逆らおうと思ったら、流れに逆らって歩いていかないといけない。途中で誰かにぶつかるかもしれないけど、一部の人達は気付いて一緒に逆走してくれるかもしれない。そしてどこかでその動く歩道のレバーを止める事ができるかもしれない。
 
<人種差別とは何か?>
→容姿の社会的解釈(これを私たちは「人種」と呼んでいる)に基づき、機会を構造化し、価値を割り当てるシステム。
- ある個人やコミュニティに不当な不利益を与える
- 他の個人や共同体を不当に利する
- 人的資源の浪費により、社会全体の力を奪う
 
<人種差別racismと人種raceは異なる>
人種に起因すると考えがちな特性は人種差別の産物である、という事がよくある。性別、SES、ジェやんだについて考えるのと同様に、人種は社会的階層化のシステムと考えるべき。人種と違って人種差別はよりシステム化されている。政策から対人関係までさまざまなレベルに影響している。人種差別とは、「人種」と呼ぶカテゴリーに基づいて、機会を構造化するシステム。racismによってraceは格差を生むことになる。
 
※人種とSESは違う!SESは、人種が健康格差につながる経路の一部でしかない。すべての経済階級において人種間の格差がみられる(個人的な意見としては、SESに含まれていない要素が残っているだけのような気も。。)
 
<Discriminationとは>人種を理由に個人が不公平に扱われること
differential treatmentとdisparate impactの2種類がある
differential treatment (差別的取り扱い): 人種を理由に個人が不公平に扱われること
disparate impact (格差のある影響): ある一定の規則や手続きに従って個人が平等に扱われるにもかかわらず、後者がある集団の構成員に他の集団よりも有利になるような形で構築されている場合に発生する
 
<raceとethnicityの違い>
  • raceとは:socially-constructed status based upon phenotype that is often (mistakenly) treated as biological(見た目に由来)人種とは、表現型に基づき社会的に構築された地位であり、しばしば生物学的なものとして誤って扱われる
  • ethnicityとは:salience attached to perceived or actual geographic birthplace and national heritage(場所に由来)民族とは、地理的な生誕地や民族的な遺産を認識または実現するために付随する重要性のこと
  • nativity: status linked to being born in or outside of the US, related to incorporation, assimilation, and acculturation process(アメリカで生まれたかどうか)ネイティビティとは、米国内外で生まれたことに関連するステータスで、法人化、同化、文化変容の過程に関連する。

 

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<もともとkinshipの分類だったraceがなぜ17世紀〜18世紀に変化したのか?>
2つの要素
②ヨーロッパにおける啓蒙主義と呼ばれる理論化
啓蒙主義の中で、科学界では自然界を分類し、階層化する流れがあった。その方法の中に人種もあてはめられ、身体的な特徴を社会的な構造物ではなく自然の摂理であると言おうとした。
 
人種、というのが生物学的な差異を反映した分類であり、人種ごとに遺伝的同質性がある、と考えがち。見た目が違うから、生物学的にも違い、特定の人種は特定の身体的・精神的な特徴を共有している、と考えがち。しかし、人種ごとにある傾向のある疾患は、人種カテゴリーの生物学的な特徴を反映したものではなく、単純に家族を介して遺伝しており、人々は同じ人種の人と結婚しやすいから、人種的な類似性があるにすぎない事が多い。人種グループ間よりも人種グループ内の方が、多くの遺伝的変異がある。つまり、人種とは、遺伝的なグループ分けではなく、社会的に決定されたものである。
 
※人種・民族の健康格差の説明:個人レベルの特性 と 環境的な要素の両方を組み合わせる事が重要
 
【Key theories of race & health】
<①Critical Race Theory> 
CRTの目的は人種に関する自分の考え方を批判的に吟味する事
4つの重要な要素がある
①人種関係の現代的パターン contemporary pattern of racial relations:自分の人種的な位置付けが自分の役割・特権にどのように影響しているか批判的に検討する
②知識生産 knowledge production:人種や人種差別がどのように科学的知識を形成しているか問う
③概念化・測定 conceptualization & measurement:どのように健康問題を概念化して測定するかにおいて、人種の影響を批判的に検討する
④行動 action:科学的知識を用いてどのように行動するか、誰の声を中心に据えるか批判的に検討する
 
<②Fundamental Cause Theory>
人種差別は根本原因か?
SESにおける人種間の違い & 人種間の違いが引き起こすSESの違い
 
システムとしての人種差別は、SES指標(学歴、収入、職業)の人種間格差と
- SES指標(教育、収入、職業)における人種間格差と、
- SES指標から得られる資源における人種間格差
の両方を形成している
 
<③Weathering Hypothesis> 風化仮説
黒人は、「風化」と呼ばれる健康状態の悪化を早期に経験する
- 社会的・経済的な逆境や政治的疎外を繰り返し経験することによる累積的な影響の結果として
- 政治的疎外の結果として
- 人種差別や人種意識の強い社会で生活することのストレスの結果として
 
<④Health Paradoxes> 健康のパラドックス
収入や教育レベルは悪いが、死亡率や出生状態などはよい結果が得られている
  • Barrio Effect:バリオ効果
  • Black-White Mental Health Paradox:白人と黒人のメンタルヘルスのパラドクス
白人よりも黒人の方が精神疾患の割合が少ないが、精神的ストレスは大きい
 
 
 
 
Aging and the life course: Connections at the individual-level and population-level
なぜlife-course persepectiveが重要なのか?
→ある一点での状態を見たのでは説明できない事がある(なぜその時点での違いが生じたのか。それまでの違いの積み重ねの結果である事がある)



 

 

 


<critical period vs sensitive period>
①critical period
その時期に暴露すると不可逆的な影響を与える時期
2つのパターン
- そもそも最初のタイミングで影響が出てしまう(死亡など)
- 若い時は代償できるので影響が出ないが、加齢に伴って代償できなくなったタイミングで影響が出てくる(暴露してもすぐに影響が出ないことがある)
②sensitive periods:可逆的
 
<critical period vs accumulation of risk>
①critical period
-  後天的な危険因子がないこと
-  後世の影響修飾因子がある場合
②accumulation of risk
-  独立した非相関の傷害がある場合 - 相関のある傷害がある場合
クラスター化・リスクの集積(同じ時期)
-  リスクの連鎖 (加速度効果やトリガー効果を伴う)
 
  • Priming: 他の危険因子(幼少期の過体重)が起こらない限り、低出生体重は心臓病につながらないかもしれない-
  • Risk clustering: 幼少期の社会階層など
  • Chain of risk: ある有害事象が別の有害事象につながる
  • アロスタティック負荷: 長期的な生理学的ストレスにより蓄積された悪影響や消耗状態を表す
  • 倹約型表現型仮説(Thrifty phenotype hypothesis): 子宮内の栄養状態が悪いと、胎児は資源の乏しい環境に適応する(体格が小さくなる、代謝率が下がる)。しかし、「倹約的表現型」を持って生まれ、豊かな社会で生活すると、豊富な余分なカロリーに体がうまく対応できず、代謝異常(肥満、II型糖尿病)のリスクが高まる可能性がある。
  • 胎児プログラミング仮説: 胎内で栄養不足の状態が続くと、胎児は環境の変化に適応し、エネルギーバランスを維持するために「成長」のために設計されたエネルギーを使うようになり、その結果、器官の発達、細胞の種類と数、代謝活性、ホルモン刺激に対する組織の感受性に永久的な変化が生じる
 
世代を超えるメカニズムは遺伝子的なものだけでなく、ストレスホルモンなどを通しても起こる

 

 

 
<population levelで考えるべき事>
寿命延伸ではなく、健康寿命の延伸を目標に変更すべき
健康寿命は、有病率が低下したときに延びるが、最も効果的なのは発症年齢を引き上げること
 
<Best Slide>上記文中
 
<Best Reading>
どうやってraceが作られたか、しかも様々な要素に影響されて作られたかが分かる
 
Structural Racismについてとてもわかりやるくまとまっている
 
Ben-Schlomo Y and Kuh D. A life course approach to chronic disease epidemiology.
図表もとてもインパクトがある論文。様々な暴露が、様々な時間軸で影響し続ける。それゆえに研究が難しい。
 
 
【PUB-HLT200】
【Health Policy Management】
<ACA(オバマケア)に先立つ3つの重要な出来事>
  • 1970年代の「管理された競争」に基づいた国民医療制度の提案
  • 1993年のクリントンの「管理された競争」に基づいた医療制度改革の失敗
  • 2006年のマサチューセッツにおいて、低・中所得の個人・家族が規制された市場で民間保険に加入するための補助金を含む、「管理された競争」に基づいた医療制度改革→これが後のACAにつながる
 
<ACAの特徴>
(制度的特徴)
  • もともとMedicaidは収入条件だけでなく、医療上の必要性、あるいは子どもがいる必要があったが、収入以外の条件が撤廃されて収入条件だけでMedicaidが使えるようになった
  • また、収入が139%〜400%だったら民間保険をmarkerplaceで買う事で税額控除を受けられることに
  • 小規模な雇用主も税額控除を受けられて健康保険料が補助される
  • 一方で、保険に加入しないと、個人と雇用主が税金で罰せられるようにもなった
  • 26歳までは親の保険に加入できるようにもした
  • 保険会社は、健康上の問題を理由に保険加入を断れなくもなった
 
(効果)
2016年までのカバー率向上は、低所得者、有色人種、成人の間で最も大きく、特にメディケイド拡大州において顕著
外来患者サービスのアクセスと利用が改善
残りの無保険者のうち、半数以上はメディケイドまたはマーケットプレイス補助金付き保険に加入する資格があるが、約15%は移民のステータスまたは住んでいる州がメディケイドの拡大がないために資格がなく、残りは雇用主からのオファーがあるか、所得によりマーケットプレイス補助金の対象外である
 
※ACA導入の最初の数年間を通じて影響を及ぼした3つの分野
  • 保険加入率
  • 医療へのアクセス
  • 保険未加入者への経済的影響
 
(課題)
  • しかし2017年にトランプ政権になって、予算が削られて、普及活動費などが削られた。同時にはじめて保険未加入率が再上昇した。トランプ政権は未加入に対する罰金も無くした。それによって、若年の健康な加入者が減りリスクの高い人の割合が増えて保険費用の上昇を招いている。
  • 費用が依然として未加入の大きな理由。移民も加入できていない。
  • 人種・民族的マイノリティは、全人口に占める割合に比べ、引き続き保険未加入者の割合が高い
  • 未保険加入者は健康リスクが高い(健診や定期フォローに行かない、発症しても受診を控えるなどして重症化しやすい)
 
(現状で言えること)
  • 入院やその他の長期的な健康アウトカムに変化をもたらすエビデンスはない
  • コスト削減に関するエビデンスはない
 
<Kingdon’s Model for Agenda Setting>
政治的な潮流、課題意識の潮流、政策的な潮流の3つが重なった時に、政策の窓が開く

 

 

 
<管理された競争:Enthoven model>
①義務づけられた供給:標準的な福利厚生、コミュニティ評価、既往症の除外なし、生涯保障の制限なし
②強制的な需要:誰もが保険に加入しなければならない、低・中所得者向けの補助金
 
 
【Environmental Health Sciences】 ACAがSDH対して与えた影響とは?
議会が持つ課税権と資金配分権("power of the purse”)を利用した介入
- 保険プランに予防サービスをカバーすることを義務付けた
- 医療制度に、治療だけでなく、人々の健康をサポートするための財政的インセンティブを与えた
- 非営利病院が地域貢献活動をするように義務付けた
 
従来:"チャリティー・ケア”:医療機関は、この公共サービスに対して非営利の非課税資格を与えられている。一方で、SDHへの病院の支出は、他の地域社会への貢献や、一般的な病院の支出に比べると、非常に小さかった。医療機関は決まりきったアウトリーチのみで、効果的な地域介入を行ってこなかった。
ACA後:国税庁が病院が3年ごとに地域医療ニーズ評価を実施するようになった。病院は、自分たちがサービスを提供する人々の主な健康上のニーズを特定することになっている。また、州、地方、部族のうち少なくとも1つの保健所と協力することが義務付けられています。
ただ、CHNAは行政レベルで対応しないといけない内容(歩道の整備など)には対応できない、という課題も
 
【Epidemiology】
ポイント①:specificityは古いcausation criteriaには入ってるが、今は入ってない!
というのは、以前は特定の原因によって発生する疾患があると考えられていたが、今はそういうものは存在せず、あらゆる疾患が複数の原因によって起きていると考えられているため。従って、specificityによってcausationの関係性を高めることも下げることもできない。Causationを検討するためには他の項目を使わないといけない。
一方で、Biological GradientやPlausibilityは因果関係を検討する上では使いやすい項目。例えばPlausiblityについてh、研究を行う際には、必ずその背景を調べる必要があるので、先行研究に基づいて妥当性のある仮説を立てる必要があります。
 
ポイント②:Ecological studyとcross-sectional studyの違いは、個人レベルのデータがあるか、集団レベルのデータしかないか、だけ。Cross-sectional studyでは個人レベルで誰が暴露して誰が暴露していないかのデータがある。
 
ポイント③:Ecological studyとCross-sectional studyの長所・短所について
長所:ともに安くて早い、という点(最近ecological studyを見ないのは、近年膨大なデータベースが存在するから)
短所:
- ecological study: confounderをコントロールできない(Ecological Fallacy:集団レベルで言えることが、個人レベルでは当てはまらない現象の事)
ecological studyはaggregated dataなので、交絡因子がコントロールできない。だからecological studyをもって因果関係を語ることはできない。
- cross sectional study: temporalityが分からない
一方、cross-sectional studyの場合はecological studyで問題になるconfoundersはコントロールできるかもしれない一方、同じタイミングでデータを集めているので、temporalityを使うことができず、どちらが原因でどちらが結果か分からない、という欠点がある。
 
【Biostatistics】 推定
  • 「標本分散s2はnではなくn-1で割って導く!」という点に注意
  • t分布における自由度dはnではなくn-1である点に注意
  • t分布は、nが十分に大きくなくて中心極限定理が適応できずxバーが正規分布していると仮定できない時に使う
  • 信頼区間の解釈について:μっていうのは固定されたものなはずだから、μに対して「●%の確率で入る」という言い方をするのは本来おかしい。なので、「何回もサンプル採取を施行したらこの信頼区間の範囲は●●%の確率でμを含む」という表現が正しい
  • 「2群の平均の差」の95%信頼区間が0を含むとは、「2群の平均の差」が0であっても95%の信頼水準で統計的にはおかしくない、ということだから、それは、5%の有意水準では差があるとは言えない状況になっている、ということです。

 

<Best Slide>上記
<Best Reading>
- Kominski GF, 2014. The Patient Protection and Affordable Care Act of 2010.
ACAについての総説:ACAに至るまでの歴史的経緯(米国保険業界におけるマイルストーン)、ACAの主な特徴、ACAが各業界に与える可能性のある影響が書かれている

ジェンダーマイノリティー & Affordable Care Act (ACA/オバマケア) (week 5)

【COM-HLT 210】
Gender Identity, Sexual Orientation and Health
LGBTQとひとくくりにされがちだが、その中でもそれぞれに異なった課題がある。そこにさらに人種や経済状況がからんで、個別性の高いニーズが存在する。
LGBTQの健康格差を是正する上での課題はそもそも基になるデータが取られていないということ。また、人数が少なく有意なデータが取りにくい、ということ。特に小児・高齢者についてのデータは不足している。
また、ある傾向を人種で説明したり、それを支持する研究を行うことは人種差別を助長することになるかもしれない事には注意が必要。(例えば黒人女性にHIVが多い理由を、既婚の黒人男性が隠れて同性での性交渉を行っている(Down Low)からだという説明を支持しようとする研究は、黒人男性が野蛮で非常識だという偏見に基づいている、あるいは助長している。)
 
<Minority Stress Model by Meyer, 2003>
ストレスはランダムに起きるのではなく社会構造に応じて発生するもの。
LGBTQに向けられた偏見やスティグマは、そのpopulation特有のストレス要因をもたらす。
resillienceという言葉がよく使われるが、これには注意が必要。というのはresillienceは社会ではなく個人に責任を押し付ける口実になるから!anti-resillienceという立場も重要。
また、Copingはリソースが無いとできない!だから、Copingという時には個人ではなくpopulation, communityを対象にしないといけない。
 
<Three aspects of sexuality define sexual orientation>
興味を持つ性(attraction/desire)と実際の行動(behavior)は必ずしも一致しない!
A. Sexual behavior
B. Sexual attraction
C. Sexual identity (e.g., gay, lesbian bisexual, queer)
 
<LGBTQsの人に関わる上での臨床Tips>
性行動は性的アイデンティティーと常に一致するわけではない!(自らを同性愛者と言わないながらも時折同性の性交渉を行う人達がいる!)
コンドームを必ずつけているかを聞くのも大事(場面に応じて付けない人たちもいるから)
性交渉の時に飲酒をしたりしてないかを聞くのも大事(危険行動のリスクとつながる)
臨床においても、どの代名詞を使ってほしいかをルーチンで聞くのは大事!
LGBTQsであっても基本の質問は一緒。ただ特有のニーズがある事も認識しておく必要がある。
LGBTQsでは精神的問題も多く、スクリーニングしておくべきである事も要留意。
 
Mental Health
精神疾患はDALYの1/3を占めており、社会的インパクトが大きい
基本的に精神疾患の世界的な罹患状況は悪化してる(もちろん交絡因子として、診断がしっかりつくようになったり、治療を求めるようになったり、研究されるようになった、という因子はある)
一方で、精神疾患患者の半分以上が治療を受けていない。一つの理由が精神疾患に対する偏見。こういうのは、同じクリニック内でまとめて受診できれば偏見にさらされる心配をしなくて済む。だからもっとコミュニティーレベルで精神疾患へのアクセスを改善するのが大事(精神疾患は個人的な問題と思われがちだが)。精神疾患は個人的な問題ではなく、集団レベルの問題でもある。だから精神疾患は公衆衛生の問題。
 
精神疾患は社会情勢によってメンタルヘルスは大きく影響を受ける。
例えばベトナム戦争が終わるまではPTSD精神疾患として位置付けられていなかったが、一方でホモセクシュアリティは1974年まで精神疾患として位置付けられていた。
DSM-5の診断基準も委員が集まって話し合いで決める。だから精神疾患には社会的・政治的な因子が入ってる。
 
精神疾患は身体疾患に影響する。逆に身体疾患があると精神疾患のリスクが上がる。
 
メンタルヘルスにはネガティブな側面だけでなくポジティブな側面もあることを忘れないように!単に病気がない、というだけではない!
 
また、精神疾患はDimensional Modelで表されるように様々な他の要因も絡み合ったものである。
 
何をもって精神疾患とするか?
→機能低下しているかどうか。たとえストレスがあったり悲しくても、生活に支障をきたしていなければ大丈夫。別に普通に日常生活が送れていれば疾患とは言わない。
 
<Best Slide>
<Three aspects of sexuality define sexual orientation>

 

 
<Minority Stress Model by Meyer, 2003>



 

 
 
<Best Reading>
Makadon HJ. Ending LGBT invisibility in health care: The first step in ensuring equitable care. Cleveland Clinic Journal of Medicine. 2011 78(4): 220-224.
医療従事者がLGBTQのケアに関わるために必要なTipsがまとまっている
 

【PUB-HLT 200A】
<Epidemiology>
<Traditional Causal Criteria: 関連性が因果関係かどうかを判断するための9項目>
①Strength of association: 因果関係の強さ
②Temporal relationship - cause precedes effect: 当たり前が、原因は結果よりも先に起きるはず
③Dose-response relationship: 喫煙量と肺癌の発生率は直線的になる
④Replication of findings: 別のセッティングでやっても同じ結果が得られるか。メタアナリシスは、そうした研究たちをまとめたもの。
⑤Biologic plausibility: 基本的に人体で検証する前に動物実験で検証しないといけない(喫煙や有害物質などは、人体での問題が先に指摘されてから明らかになる事も多いが)
⑥Consideration of alternate explanations
⑦Cessation of exposure essentially performing an experiment
⑧Specificity
⑨Consistency with other knowledge
 
<因果関係の4つの種類>
①Necessary and sufficient: その疾患が起きるのにはその原因が絶対に必要、かつその原因があれば必ずその疾患が起きる、というもの。例:サルモネラ
②Necessary but not sufficient: 例:COVID-19とコロナウイルスの関係。COVID-19にかかるには最低限ウイルスに暴露されないといけないが、ワクチンや免疫状態に応じて実際に発症するかどうかは変わる
③Sufficient but not necessary:これが一番一般的。例:乳癌の発生要因はいくつかある。一番寄与しているのはinheritance of cancer gene(BRCA)。だけどそれ以外の原因で発症することもある。1つでもあれば発症するけど、それ例外の原因でも発症する。
④Neither sufficient nor necessary: 例:高脂肪食 単独で心疾患を引き起こす事はないし、高脂肪食を摂取してなくても心疾患は起こる
 
<因果関係を検討する上で注意すべき点>
  • Confounding(交絡因子)
  • Random Gene Changes:生活習慣だけでなく、ランダムな遺伝子要因も影響する
  • Other Factors:発症する人も単独の理由ではなく、様々な要素が影響する
 
<研究の種類>
①Ecologic Study
とにかく安い。でもそのコミュニティーの中の個人についてのデータは分からない。
②Cross-Sectional Study
リスクと疾患を同時に調べる(prevalenceについて調べる研究)
今の時点で病気がある人とそうじゃない人を集めて、過去の曝露歴を聴取する。覚えてない人もいるだろうしバイアスは当然ある
 
 
<Community Health Sciences>
ACAは子供のいない低所得層の成人に対しての門戸を開いただけでなく、扶養される子どもの年齢を上げたり、民間保険において健康状態によって加入拒否されることを禁止したり、民間保険を買うのに対して税控除を行ったり、保険に入らない個人や雇用者に罰金を設けたりした。
ACAは全体として加入率を上げたが、特に加入率の低いヒスパニックの加入率を大きく上げて、人種間の格差を(わずかに)減らした。それでもなお人種間の格差は残っている。また、アメリカの住民票が無い移民たちなどはACAの適応にはなっていない。
そもそもヘルスケアへのアクセス、というのは健康保険カバー率だけでは評価できない。医療機関への物理的な距離や、差別による心理的障壁や言語的な障壁もある。また、健康へのアクセス、に広げると、予防医療へのアクセスも含まれるし、医療機関で受ける差別も含まれる。例えば、LGBTQの人たちは様々な差別を経験しているが、特に人種的マイノリティーのLGBTQはさらに大きな差別を経験している。
 
<Health Policy Management>
アメリカの医療費は20年で3倍以上になり、全GDP内での割合も14→20%に上昇。
他国と比較する場合、イギリスやカナダのように一般財源で医療制度を維持するパターンもあれば、日本のように公的保険という形で維持する形もある。しかも、アメリカのように民間保険がメインの場合、それぞれの保険でカバーされるサービス範囲や医療機関の質は異なるので簡単には比較できない。また、アメリカのように移民が多くて市民権を持っていない人が多くいる場合には、カバー率の分母を何にするのかも大きな問題(そもそも分母に入れられていない人が多くいる)。
アメリカは「防ぎ得る死」の割合も最も高い。(銃の問題。銃規制の問題は公衆衛生の問題でもある。しかも基本的に若い人が死ぬのでより影響は大きい。)
アメリカの未保険加入率は10%台だが、他の先進国は1%前後。
 
アメリカの保険制度はとにかくややこしいのが問題。
大きくは、雇用関連制度(高齢者、身障者向けであるMedicareを含む)、貧困層・無保険者向け制度(Medicaid, SCHIPS)、退役軍人・家族向け制度、労災制度に分けられる。
Medicareは連邦政府が運営しているが、Medicaidは各州が運営している
MedicareもパートA〜Dまで分けられ、入院・外来・薬剤に分けられていて、それぞれ別々に加入するので極めて複雑。
ACA(オバマケア)は、Medicaid加入のための収入基準を緩和し、民間保険会社が加入を断れないようにした上で個人・雇用者に保険加入を義務付けている。
 
<BIOSTAT>
割付け方:ランダム化するか(ブロックランダム化、層別化)
盲検化するか(single or double blinding)
分析方法をどうするか(Intent-To-Treat, As Treated, Per-Protocol)
 
研究結果に影響を及ぼしうる患者の特性は推定できるものもあるけど未知のものもある。従ってなるべくサンプル数を大きくするのが大事。
 
ブロックランダム化:サンプルが予定人数に達しなくてもサンプル群間の差が最小限に抑えられるようにするため。ブロックを作ってブロック内で均等に割付けて、という事を繰り返す。
層別化:研究結果に影響を及ぼしうる因子については、その因子の中でも均等に割付けられるようにあらかじめ分けておく。ただ、ややこしいし、人数が少ないと、
盲検化:二重盲検がいい、と思うけど、それが物理的に不可能な事も多い。例えばCBTをインターネットでやるのと対面でやるのとどっちがいいのか、というのを比較する場合、患者も医者もどちらに割り当てられてるかを知らない、というわけにはいかない。
 
Intent-To-Treatはフォローできなかった人は除く(データが回収できなかったので除かざるをえない)けど、プロトコールを守ろうと守らなかろうと、最初の割り付けた群同士で比較する。
3つの分析法のうち、Per-Protocolが一番よさそうにも思うけど、一番いいのはIntent-To-Treat。まず第1にランダム化を一番反映しているから。Per-Protocolだと、プロトコールを守った人、という偏ったポピュレーションのデータになってしまい、ランダム化した意味が薄れてしまう。第2に、飲む側に割付けてた人の中には飲まない人も出てくるから効果はやや低く出るし、飲まない側に割り付けていた人の中にも飲む人が出て、少しいい結果になるので、飲む飲まないによる差が最も小さくなると言える。それでもなお効果が出るならばやはり効果があると言える。
 
<Best Slide>
授業で扱われたスライドではないけど、大阪大学の腎内のHPに研究の種類がわかりやすくまとまっていたので拝借(https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/kid/clinicaljournalclub5.html

 

 

<Best Reading>
Buchmueller TJ, et al., 2016. Effect of the Affordable Care Act on Racial and Ethnic Disparities in Health Insurance Coverage. AJPH, 106(8):1416-1421. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4940635/
ACA(Obama Care)についてよくまとまっている

健康格差 & ケアへのアクセス(Week 4)

【COM-HLT210】
Health Inequalities 
正義は、公衆衛生の使命の中心をなす
共通の利益と負担の公正な分配
個人の利益と集団の利益のバランスを取る事が大事
 
equalityは全員に平等に分配する事を意味する
一方でequityは正義や人権に基づいた考え方(すべての人が自分の可能性を最大限に発揮するための公平な機会を持つべきだという考え方)
 
Proportionate Universalism:より低い地位の人にはより多くの資源配布が必要
 
不平等の測定は、しばしば医療機関へのアクセスだけで測定されている。しかし、健康の不平等には医療機関内での対応の差も影響している。しかし、そうした側面はしばしば考慮されていない。
 
Gender and Health Inequities
ジェンダーと健康格差についての研究の課題は、そもそもジェンダーに関する研究をするもとになるデータベースや指標が無いこと(既存の質問紙は男性中心に作られている)。その中でも分野によって進み具合が異なる。
 
男性の方が寿命が短い が 女性の方が罹患率は高い(女性の方が長生きするから、という説も)女性が寿命が長いのは、生物学的な有利さと、健康的な行動パターンに起因する。一方で、経済状態の不安定さや社会的なストレスに暴露されることで、非致死的な疾患に罹患しやすくなっている。というのが仮説。性差を生物学的な差異だけで説明することはできない。社会的要素と生物学的な要素がからみあって影響している。
 
ジェンダーはrelationalである。ジェンダーは生まれ持ったものではなく、社会構造によって形成される。男と女、という二項対立をやめなければならない。現実はもっと複雑。
ジェンダーには様々な社会的な構造が同時に影響しあっている(intersectionality)
また、身体的(生物的)事象と社会的な現象がともに関係している(biosocial perspective)
 
 
<Best Slide>
こどもへの教育は大事。たとえ経済的格差があっても政策次第で乗り越えられる。

 
equalityとequityを超えてjusticeを目指すのがpublic health


 
<Best Reading>
readingではないけど、最高におもしろかったしプレゼンの仕方も勉強になった
 
<コメント>
health equityとhealth equalityの違いはある程度イメージがついたけど、health inequalityとhealth inequityの違いはいまだによく分かっていない。
不平等の測定は医療機関へのアクセス、という指標でしばしば測定されるが、実際の不平等は、医療機関での扱われ方や言語的障壁、予防医療へのアクセスなど、様々な要素がからみあっており、それらはしばしば考慮に入れられていない。
性差、というのはしばしば男女の二項対立で扱われるが、もっとrelationalで、かつ生物学的な特徴と社会構造が入り組んだもっと複雑なもの。しかし、そもそも研究する基礎となる評価指標やデータベースが整っていないことが課題。
 

【PUB-HLT200】
(Community Health Science)
ケアへのアクセスの指標:場所・ポピュレーションによって異なる(2つの軸で切るのが大事)。アクセスへの障害は、保険の問題だけでなく、精神的な障壁や言語的障壁、移動のアクセスだけでなく時間的なアクセスも含まれる。また、提供されるケアの質も考慮に入れないといけない。また、治療だけでなく、予防医療へのアクセスも考慮する必要がある。racismやethnicityの話だけでなく、LGBTQsや市民権(移民)などによってもケアへのアクセスは影響を受ける
 
RaceとEthnicityの違い:しばしばraceとethnicityは重なる
Race: 定義は時代や場所によってコロコロ変わる。基本的に遺伝型ではなく表現型で定義される。自己申告が基本だが、回答する際に自分のカテゴリーがない事も。
Ethnicity: cultureやraceと混同して使われる。実際、raceやcultureなどが組み合わさったものとして、社会・文化・政治的な要素で定義される。raceの婉曲表現として使われることも。一番いいのは、国勢調査を使うのではなく、その人々の中に入って、彼らが実際にどのように社会で扱われているかを観察すればいい
 
(Biostatistics)
random sample: ①independent, ② 0の確率のものはない、という条件を満たすもの
simple random sample: ①と②の基準に加えて、選ばれる確率は全員同じ(random sampleの一部)
 
二項分布は離散型の確率変数(discrete random variables)の中で代表的なものだったが、連続型の確率変数(continuous random variables)の中で代表的なものが、正規分布
 
平均値がμ、分散がσ2正規分布はN(μ, σ2)と表現される ※N(平均, 分散)
二項分布はnとpによって変形したが、正規分布はμとσによって変形する
 
正規分布が頻用されるのは、母集団がたとえ正規分布でなかったとしても、そのサンプルの大きさnが大きかった場合、サンプルの平均(標本平均)の分布は正規分布になるから。
また、標準正規分布は頻用される。というのも、標準正規分布は95パーセンタイル値がいくつか、などが分かっているから。
 
「サンプルの平均」の平均:μ(母集団の平均)
「サンプルの平均」の分散:σ2/n
中心極限定理:nが増えるとたとえ母集団が正規分布でなくても平均のXバーの分布は正規分布になる
 
(Environmental Health Sciences)
アメリカの環境保護規制について:EPAが専門機関として主に対応している
政治家は謙虚ではないが、自分たちの専門ではない件については、専門機関に委託している
どのようにして専門機関(Executive branch)が力を発揮するのか。その経路にはいくつか種類がある
①Interstate Commerce Clause を使って
②Power of the purse を使って
③Treaty power を使って
④Property clause を使って
 
アメリカで、連邦レベルでの規制があるのはClean Air ActとClean Water Act、NEPAのみ。温室効果ガスに関する法律はない。従って、EPAはClean Air Actを使って温室効果ガスの取締をやっている。
ACAは非営利の医療機関に対して、SDOHに貢献するようインセンティブを付けている
 
<Best Slide>
中心極限定理:母集団がたとえ正規分布でなかったとしても、そのサンプルの大きさnが大きかった場合、サンプルの平均(標本平均)の分布は正規分布になる

 
 
<Best Reading>
Meyer R. (2017). How the U.S. Protects the Environment, From Nixon to Trump: A curious person’s guide to the laws that keep the air clean and the water pure. The Atlantic, March 29, 2017. https://www.theatlantic.com/science/archive/2017/03/how-the-epa-and-us-environmental-law-works-a-civics-guide-pruitt-trump/521001/
 
アメリカでは環境保護規制の法律がほとんどなく、規制を専門機関に丸投げしているという現状。しかも規制対象になっている物質はわずかで、大企業は規制から外されているなどかなりザルな状態。
 
<コメント>
ケアへのアクセスは、保険、精神的・言語的障壁、移動・時間的アクセスなど様々な要素が含まれる。また、提供されるケアの質も考慮に入れないといけない。また、治療だけでなく、予防医療へのアクセスも考慮する必要がある。racismやethnicityの話だけでなく、LGBTQsや市民権(移民)などによってもケアへのアクセスは影響を受ける。

公衆衛生における倫理 & 健康格差(Week 3)

【COM-HLT210】
Research Ethics and Public Health
Ethicsとは:その人の態度や行動を支配する道徳的なルール
Research ethicsとは:研究をどのように行い、公開するかについての倫理的なガイドライン
 
(倫理的スタンスの大きな4分類)
 
普遍主義
偶発的/相対主義
義務論/非結果主義
倫理的原則は決して破ってはならない。これらの原則を破ることは、道徳的に間違っていると同時に、社会調査にとって有害である。
義務は、特定の国、地域社会、専門家グループ、顧客と結びついている。
 
結果主義
手段は目的と重ならないが、普遍的な規則や慣習に従うことは、しばしば目的を追求するために信頼できる。(功利主義
行為は、純粋にその可能な結果によって判断されるべきである。
 
 
  • Nuremberg Code: ナチスの教訓をもとに作られた
被検者の自発的な同意が必須
 
  • Belmont Report: Tuskegee Syphilis Studyの教訓をもとに作られた
尊厳の尊重(同意、vulnerable populationsへの配慮の重要性)
リスクベネフィットの重視(有害性が分かってるなら止める)
正義の尊重(vulnerable populationの搾取をしないetc)
 
<Best Slide>

 
<Best Reading>
Schüklenk U. (2005). Module one: introduction to research ethics. Developing world bioethics, 5(1), 1–13. https://doi.org/10.1111/j.1471-8847.2005.00099.x
 
<コメント>
昔を振り返るとありえないと思うような事がされているが、その当時は特に違和感が無かったから行われていたんじゃないだろうか。だから彼らが異常で、自分たちが正常と思うのではなく、今も気付かれていないだけで、倫理的に問題のある事はなされている可能性がある。公衆衛生における倫理は、生命倫理の考え方が大前提にあるが、大きく違うのは対象が個人か集団か、という点。個人の自主的な同意を取ったり、個人のメリット・デメリットと天秤にかける、という考え方をそのまま集団には適用できない。コミュニティーとしての同意や利害をどうやって判断するのか、というのはとても難しい。また、倫理基準は法的な拘束力はないため、どこまでを倫理的問題とするのか、どこからを法的問題とするのか、の千疋も難しい。
 

【PUB-HLT200】
(Epidemiology)練習問題をやりながら、Risk Difference, Risk Ratio, Attributable Risk Fractionの理解を深める。
Attributable Risk Fractionの分母をexposed group(exposed AR)にするか、total population(population AR)にするか、というのが未だにはっきりしないところ。
 
(Community Health Science)Health Disparities and Health Inequities
Behavior, Knowledge, Belief, Attitudeの違い
TheoryとModelの違い:theoryはより洗練されていて、modelはより広く必ずしも詳細なものとは限らない
今回紹介したのは
Health Belief Model
Social Cognitive Theory
Socio Ecologic Model
Stages of Change
Theory of Planned Behavior
 
(Biostatistics)確率変数(random variables)
確率変数には2種類:離散型と連続型
離散型の確率変数はPMF(確率質量関数)と呼ばれる
連続型の確率変数はPDF(確率密度関数)と呼ばれる
CDF(累積分布関数)は、PMFやPDFの面積(積分)のこと
 
PMFの期待値E(X)はμ、分散Var(X)はσ2と表される。σ2=E(X2)-μ2。
 
特殊だけど頻用されるPMF(離散型)として二項分布(binominal distribution)というのがある。各事象が「独立」である事、各事象は「成功」or「失敗」の2択であること、が特徴。
二項分布の期待値E(X)はnp、分散Var(X)はnp(1-p)で表される。
 
ある事象が起こる事が、異常かどうかをどのように判定すべきかについて、確率P(X=k)ではなくP(X≧k)orP(X≦k)を用いる理由
→例えば、一般的に自閉症の発生率が5%だった時に、ある100人の集団の中で、自閉症が10人出た場合、それが異常かどうかを判定する時、P(X=10)ではなく、P(X≧10)を用いる。これは、ピンポイントでP(X=10)となる確率はあまり意味がなく、実際にほしいのはP(X≧10)だから、である。
nが100ならまだしも、nが10,0000とかになった場合、P(X=10)に限らず特定のXの値となる確率はnが大きいせいで、小さくなってしまい、あまり実際的な意味が無くなってしまう。さらに離散型ならまだしも連続型の場合、特定の値を取る確率P(X=k)というのは存在し得ない。従って、積を求めるP(X≧k)の方が実情を反映する数値となる
 
(Environmental Health Science)
Distributional Justice vs Procedural Justice
困窮している集団に対して危険が不当に分配されていないか
vs
困窮している集団の事を一番に考えて意思決定がなされているかどうか
 
分布を見る時は、地図上の直線距離で近接性を評価するのではなく、実際に車や交通機関を使った場合の距離で近接性を評価しないといけない
 
食品へのアクセスと社会的不平等の関係について
Upstream vs Downstream
upstreamの介入の方が有効かつ経費が少なくて済む。しかし、現実にはupstreamの介入はあまり行われない。理由は、企業の反対や、政府の過干渉、個人の自由の侵害、法的な制約など。
 
High Agency vs Low Agency
High Agencyの介入は、労力を要する一方で効果が低く、さらには格差を広げやすい
 
<Best Slide>

 
 
<Best Reading>
 
<コメント>
EpidemiologyやBiostatisticsは、分からない内容が出てくるのではないかと毎週のように戦々恐々としているが、今のところなんとか生き延びている。大学時代にきちんとやってこなかったツケを払わされている感じ。
今週一番興味深かったのは、EHSの授業。Environmental JusticeにはDistributional JusticeとProcedural Justiceがある事、介入はUpstreamの方がコストもかからず効果も大きいが現実にはあまりなされない事、High Agencyの介入は、コストがかかるだけでなく格差を広げる可能性が高い、という事。

エビデンスに基づく公衆衛生 & 公衆衛生概論(Week 2)

【COM-HLT210】
Public Health Surveillance and Data Systemsエビデンスに基づく公衆衛生
 
5段階のステップ <PERIE> 円環状に動く
Problem
Etiology
Recommendations
Implementation
Evaluation
①Problem
評価指標としては、incidence rate, mortality rate, prevalenceなど
②Etiology
 
①と②においてはpublic health dataを使うことになるが、その使用には6つの段階がある
Collect: 7種類のデータ源
Compile: infant mortality rateとlife expectancyが重要指標。HALEやDALYは死亡だけでなく疾病も含んでおり包括的
Present: よいプレゼンの7つの評価指標
Perceive: 受け止め方に影響する3つの要素(dread, unfamiliar, uncontrollable)
Combine: 
Decision Making
 
The Social Determinants of Health
ケアへのアクセスと医療の質が健康に及ぼす影響は全体の20%
残りの80%は、物理的環境、社会経済的要因、健康行動によって決まる
 
<Best Slide of the week> PERIE、というプロセスが公衆衛生では鍵になるらしい

 
<Best Reading of the week>
おもしろかった課題図書は2つ。SDOHに関連したGollustとThorntonのもの。
Gollustの方は、SDOHに関する報道の受け止め方が、民主党支持者と自己責任論者の共和党支持者とでは違う、というもの。イデオロギーによって、世界観によって、受け入れ方は変わるし、情報提供や啓蒙などコミュニケーションにおいては、その人の世界観に合わせた丁寧なコミュニケーションが重要なのだと改めて痛感。
Thorntonの方も、SDOHに対する介入が、包括的かつ長期的かつ丁寧である必要性を説明している。例えば、ある分野での介入が他分野での結果につながる事があるので、包括的な評価が必要。また、小児期の介入が成人に渡って影響するこもとある。また、よい結果を生むと思って行った介入が、逆に健康格差を広げたりすることもあるので、予備研究や予備介入などの丁寧な準備が必要。
- Gollust SE, Lantz PM, Ubel PA. The polarizing effect of news media messages about the social determinants of health. Am J Public Health. 2009. 99:2160-7. http://ajph.aphapublications.org/cgi/reprint/99/12/2160
- Thornton, Glover, Cene, Glik, Henderson, Williams. 2016. Evaluating Strategies for Reducing Health Disparities By Addressing The Social Determinants Of Health. Health Affairs 35(8): 1416-23.
 
<コメント>
より多くの人口に影響を及ぼすことができる介入が重要なのは間違いないが、一方でそちらにあまり偏りすぎるとマイノリティーを置いてきぼりにしてしまう。功利主義を軸にするアプローチと、社会正義を軸にするアプローチのバランスを取ることが課題。
統計データ、というのは、国や時代によって全然違ったりするので、一概に比較できない。常にこぼれ落ちるデータがある事にも注意しないといけない(標準化ではそこに当てはまらないものは無かったことになってしまう。黒人と白人の健康度は、収入や教育レベルなどを計算に入れて調整しても、なお差が残ってしまう。それを理由に遺伝的な要因や人種の違い、と位置づけてはならず、調整に入れる因子が、影響している因子すべてを拾いきれていない、という問題がある(medical racismや人種差別によるストレスなど))
 

【PUB-HLT200A】
<Epidemiology>Attributable Risk, PAF, Measures of Morbidity/Mortality, 2x2 Table
  • Prevalence
  • Incidence: 分母は新規発症しうる人(すでに発症した人は引かないといけない)
  • Odds Ratio (OR)
  • Relative Risk (Risk Ratio) (RR)
  • Risk Difference (Excess Risk, Attributable Risk) (RD, AR)
  • Attributable Fraction (AF)
 
(Case#1について)
Trans Fatは、長期保存ができて安いという経済的なメリットがある。代替品は存在するが高価である。従って、政府は補助金などを出すべきである。こうしたTrans Fat制限は、ファストフードや安価な食品を多く摂取している低所得層に偏って影響を及ぼす可能性が高い。また、Trans Fatという言葉自体があまり普及していないので、まず啓蒙活動が必要である。
 
<Environmental Health Science>イントロ
  • Environmental Healthとは何か?
  • Environmental Healthにおける重要概念
  • Environmental Healthの歴史
 
(Environmental Healthとは何か?)
Determinants of healthの要素(Biology, Environment, Healthcare, Behaviors, Socioeconomic factors)のうち、environmentが占める割合は20%
ZipCodeによって寿命が変わる。それは遺伝子よりも重要。
Socio-ecological frameworkの中にenvironmentは入っていないが、多段階に渡って影響している
Environmental Healthは有害なものだけではなく、有益がものも含む。また、分野横断的なのも特徴。
 
(Environmental Healthにおける重要概念)
Hazard
Toxicity
Dose
Exposure(必ずしも有害ではない)
Vulnerability (biological susceptibility vs social vulnerability+adaptive capacity)
Risk (Probability vs Magnitude)
Environmental Justice (Distributional vs Procedural)
Precautionary Principle
 
(Environmental Healthの歴史)
発展とともにリスクは変化していっている。
伝統的なリスクである、家庭や職場における感染症
→コミュニティーや世界規模の慢性疾患へ
 
(Take-home message)
  1. Environmental Healthは政策に参加しなければならない
  2. Environmental Healthは複雑で、分野横断的なアプローチが必要
  3. Environmental Healthは国際的な問題
 
<Biostatistics>
Mutually Exclusive: 「同時には起きない」ということ
(例えば血圧<140と血圧≧140はmutually exclusive)
Independent Events: 独立、とは、それぞれの事象が、互いに起きる確率に影響を与えない、ということ。コインを投げる事象を例に考えるとイメージしやすい。
Conditional Probability: 条件付き確率
PPV, NPV, Sensitivity, Specificity
Bayes’ Rule: P(B|A)という左がB右がAのものを、P(A|B)という左がA右がBのものから求められる。つまり時間軸を逆にできる、というのがミソ!手元にあるのは感度・特異度。でも現場でほしいのは的中率。求めにくい的中率を感度・特異度から求められる、というのがベイズの定理のミソ。
 
<Health Policy and Management>
Preventive Power vs. Sic Utere doctrine (no harm principle:汝のものを、 他者を害することのないように用いよ)
予防権とは、公共または公益に対する危害を防止するための国家の権力である。財産の慣習法(sic utere)は、より狭義に、財産を使用して他人を傷つけることを防ぐものである。
この区別が重要なのは、以下の理由による。
1. 社会的な生活を享受する人々の能力を最大限に保護することを意味する共通善の概念。
2. 害の予防 vs すでに明らかになっている被害の改善
- 公衆衛生と共通するのは、この予防の原則である。
 
一次的なニーズに注目した場合、貧困層が公衆衛生介入に反応する能力は限定的である。
構造的な人種差別の下流への影響に対抗するには、上流への介入-経済的・政治的介入が必要
財産の慣習法にはStructural Racismが潜んでいる
 
DICE model (Duration, Integrity, Commitment, Effort) vs Change management (story tellingが改革には大事。アイデンティティーや物語、モチベーションによって人は動く)
 
<Best Slide> 郵便番号が違えば寿命が違う、というショッキングな内容


<Best Reading>
Gochfeld, M., & Goldstein, B. D. (1999). Lessons in environmental health in the twentieth century. Annual Review of Public Health, 20(1), 35-53. https://www.annualreviews.org/doi/full/10.1146/annurev.publhealth.20.1.35