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公衆衛生と都市計画を学ぶためUCLAに留学中の和製家庭医のブログです

エビデンスに基づく公衆衛生 & 公衆衛生概論(Week 2)

【COM-HLT210】
Public Health Surveillance and Data Systemsエビデンスに基づく公衆衛生
 
5段階のステップ <PERIE> 円環状に動く
Problem
Etiology
Recommendations
Implementation
Evaluation
①Problem
評価指標としては、incidence rate, mortality rate, prevalenceなど
②Etiology
 
①と②においてはpublic health dataを使うことになるが、その使用には6つの段階がある
Collect: 7種類のデータ源
Compile: infant mortality rateとlife expectancyが重要指標。HALEやDALYは死亡だけでなく疾病も含んでおり包括的
Present: よいプレゼンの7つの評価指標
Perceive: 受け止め方に影響する3つの要素(dread, unfamiliar, uncontrollable)
Combine: 
Decision Making
 
The Social Determinants of Health
ケアへのアクセスと医療の質が健康に及ぼす影響は全体の20%
残りの80%は、物理的環境、社会経済的要因、健康行動によって決まる
 
<Best Slide of the week> PERIE、というプロセスが公衆衛生では鍵になるらしい

 
<Best Reading of the week>
おもしろかった課題図書は2つ。SDOHに関連したGollustとThorntonのもの。
Gollustの方は、SDOHに関する報道の受け止め方が、民主党支持者と自己責任論者の共和党支持者とでは違う、というもの。イデオロギーによって、世界観によって、受け入れ方は変わるし、情報提供や啓蒙などコミュニケーションにおいては、その人の世界観に合わせた丁寧なコミュニケーションが重要なのだと改めて痛感。
Thorntonの方も、SDOHに対する介入が、包括的かつ長期的かつ丁寧である必要性を説明している。例えば、ある分野での介入が他分野での結果につながる事があるので、包括的な評価が必要。また、小児期の介入が成人に渡って影響するこもとある。また、よい結果を生むと思って行った介入が、逆に健康格差を広げたりすることもあるので、予備研究や予備介入などの丁寧な準備が必要。
- Gollust SE, Lantz PM, Ubel PA. The polarizing effect of news media messages about the social determinants of health. Am J Public Health. 2009. 99:2160-7. http://ajph.aphapublications.org/cgi/reprint/99/12/2160
- Thornton, Glover, Cene, Glik, Henderson, Williams. 2016. Evaluating Strategies for Reducing Health Disparities By Addressing The Social Determinants Of Health. Health Affairs 35(8): 1416-23.
 
<コメント>
より多くの人口に影響を及ぼすことができる介入が重要なのは間違いないが、一方でそちらにあまり偏りすぎるとマイノリティーを置いてきぼりにしてしまう。功利主義を軸にするアプローチと、社会正義を軸にするアプローチのバランスを取ることが課題。
統計データ、というのは、国や時代によって全然違ったりするので、一概に比較できない。常にこぼれ落ちるデータがある事にも注意しないといけない(標準化ではそこに当てはまらないものは無かったことになってしまう。黒人と白人の健康度は、収入や教育レベルなどを計算に入れて調整しても、なお差が残ってしまう。それを理由に遺伝的な要因や人種の違い、と位置づけてはならず、調整に入れる因子が、影響している因子すべてを拾いきれていない、という問題がある(medical racismや人種差別によるストレスなど))
 

【PUB-HLT200A】
<Epidemiology>Attributable Risk, PAF, Measures of Morbidity/Mortality, 2x2 Table
  • Prevalence
  • Incidence: 分母は新規発症しうる人(すでに発症した人は引かないといけない)
  • Odds Ratio (OR)
  • Relative Risk (Risk Ratio) (RR)
  • Risk Difference (Excess Risk, Attributable Risk) (RD, AR)
  • Attributable Fraction (AF)
 
(Case#1について)
Trans Fatは、長期保存ができて安いという経済的なメリットがある。代替品は存在するが高価である。従って、政府は補助金などを出すべきである。こうしたTrans Fat制限は、ファストフードや安価な食品を多く摂取している低所得層に偏って影響を及ぼす可能性が高い。また、Trans Fatという言葉自体があまり普及していないので、まず啓蒙活動が必要である。
 
<Environmental Health Science>イントロ
  • Environmental Healthとは何か?
  • Environmental Healthにおける重要概念
  • Environmental Healthの歴史
 
(Environmental Healthとは何か?)
Determinants of healthの要素(Biology, Environment, Healthcare, Behaviors, Socioeconomic factors)のうち、environmentが占める割合は20%
ZipCodeによって寿命が変わる。それは遺伝子よりも重要。
Socio-ecological frameworkの中にenvironmentは入っていないが、多段階に渡って影響している
Environmental Healthは有害なものだけではなく、有益がものも含む。また、分野横断的なのも特徴。
 
(Environmental Healthにおける重要概念)
Hazard
Toxicity
Dose
Exposure(必ずしも有害ではない)
Vulnerability (biological susceptibility vs social vulnerability+adaptive capacity)
Risk (Probability vs Magnitude)
Environmental Justice (Distributional vs Procedural)
Precautionary Principle
 
(Environmental Healthの歴史)
発展とともにリスクは変化していっている。
伝統的なリスクである、家庭や職場における感染症
→コミュニティーや世界規模の慢性疾患へ
 
(Take-home message)
  1. Environmental Healthは政策に参加しなければならない
  2. Environmental Healthは複雑で、分野横断的なアプローチが必要
  3. Environmental Healthは国際的な問題
 
<Biostatistics>
Mutually Exclusive: 「同時には起きない」ということ
(例えば血圧<140と血圧≧140はmutually exclusive)
Independent Events: 独立、とは、それぞれの事象が、互いに起きる確率に影響を与えない、ということ。コインを投げる事象を例に考えるとイメージしやすい。
Conditional Probability: 条件付き確率
PPV, NPV, Sensitivity, Specificity
Bayes’ Rule: P(B|A)という左がB右がAのものを、P(A|B)という左がA右がBのものから求められる。つまり時間軸を逆にできる、というのがミソ!手元にあるのは感度・特異度。でも現場でほしいのは的中率。求めにくい的中率を感度・特異度から求められる、というのがベイズの定理のミソ。
 
<Health Policy and Management>
Preventive Power vs. Sic Utere doctrine (no harm principle:汝のものを、 他者を害することのないように用いよ)
予防権とは、公共または公益に対する危害を防止するための国家の権力である。財産の慣習法(sic utere)は、より狭義に、財産を使用して他人を傷つけることを防ぐものである。
この区別が重要なのは、以下の理由による。
1. 社会的な生活を享受する人々の能力を最大限に保護することを意味する共通善の概念。
2. 害の予防 vs すでに明らかになっている被害の改善
- 公衆衛生と共通するのは、この予防の原則である。
 
一次的なニーズに注目した場合、貧困層が公衆衛生介入に反応する能力は限定的である。
構造的な人種差別の下流への影響に対抗するには、上流への介入-経済的・政治的介入が必要
財産の慣習法にはStructural Racismが潜んでいる
 
DICE model (Duration, Integrity, Commitment, Effort) vs Change management (story tellingが改革には大事。アイデンティティーや物語、モチベーションによって人は動く)
 
<Best Slide> 郵便番号が違えば寿命が違う、というショッキングな内容


<Best Reading>
Gochfeld, M., & Goldstein, B. D. (1999). Lessons in environmental health in the twentieth century. Annual Review of Public Health, 20(1), 35-53. https://www.annualreviews.org/doi/full/10.1146/annurev.publhealth.20.1.35